古文書 予備知識(書状関係)
古文書を読むにあたっての予備知識(書状関係)です。
<古文書の種類(書状関係)>
- 御内書。将軍からの文書。
端午の節句(5月5日)・重陽の節句(9月9日)・歳暮(年末)の三季に、大名からの進物への返礼として発給された。
(例)
- (老中)奉書。将軍の言葉・命令を(老中から)伝える文書。
江戸時代には、(三季祝儀以外の)儀礼的な挨拶等への返礼の奉書が多く、老中返札(へんさつ)と呼ぶこともある。
その場合には連署ではなく月番老中単独の差出が通例である。
(例)
- 請書。老中奉書を受領した大名家側からは「請書(うけしょ)」を老中に提出する。
(例)
- 宛行状(あてがいじょう・あておこないじょう)。恩賞、知行、所領などを宛行(充行)ことを証明した文書。
月日だけでなく年も記される。
(例)
- 領知判物・領知朱印状・黒印状。
江戸幕府将軍から発給されたものでは、石高十万石以上及び従四位下・侍従より上の大名には判物となり
朱印ではなく花押(書判)に、さらに三位中将以上に対しては花押以外に諱が加わる。
大名(藩主)から発給されたものでは、判物・朱印状・黒印状があり、さらに竪紙・折紙により軽重を使い分けた。
<書状関係の様式>
- 一般的な書状の全体イメージ
- 料紙の右方を「袖(そで)」、左方を「奥(おく)」という。
- 横長の料紙を上下二つに山折にし、袋を下にした上半分に書く。上半分で書ききれない場合には、
180度回転させて下半分に続きを書く。
このような使われ方は「折紙(おりがみ)」と言われる。「折紙付」の折紙はこれ。
折らずにそのまま使用する様式が「竪紙(たてがみ)」、(主に折紙の折り目で)切断して使用する様式を「切紙(きりがみ)」という。
元々は竪紙が正式な文書に用いられ、折紙は略式であった。
(例)
- 通常の書状の本文は、一筆啓上などで始まり、恐々謹言などの書止文言で終わる。
宛行状などの公文書の場合、書止文言は「如件(くだんのごとし)」となる。
- 老中奉書や一般の書状などでは、通常は年はなく月日のみ。
- 差出は、日付の行の右に、名字と官職名、日付の行の下に、実名(諱)と花押(書判)。
名字ではなく、紀伊大納言などのように所領の名前の場合もある(宛所でも同様)。
写や案文の場合、花押のところは花押そのものではなく「判」や「在判」の文字で書いてある。
ちなみに、釈文を作成するときに花押のところは「()」をつけて「(花押)」と書く。
- 宛所は、名字と官職名。その次の行に脇付がある場合も。
- 本文のスペースに収まりきらない場合、本文に続いての文章(尚書き)を、
「尚々」や「猶々」などの書出しで本文より右(袖)に、一段下げて書く。
それでもスペースが足らないときには本文の行間に書いていく。
(例)
<書状関係での約束事>
<書状関係での頻出パターン>
- 書き始め
- 自発
・一筆令啓達候
・一筆致啓達候
・一筆致啓上候
・一筆啓上仕候
- 返事
・貴翰致拝見候
・貴札致拝見候
・貴札令拝見候
・御札致拝見候
・御状令拝見候
・御状令披見候
・芳札令披見候
・来札令披見候
・御書致拝見候
- 季節
・改年之御慶奉不可申収候
・改年之御慶不可有尽期候
・新春之御慶不可有尽期御座候
・新年之御吉慶不可有尽期御座候
・新春之御慶不可有際限御座候
・青陽之御慶不可有際限候
・新春之慶賀珍重候
・新暦之御賀不可有休期候
- 書き始めの後、将軍家のご機嫌
- 将軍家の列挙
・公方様
・公方様 内府様
・公方様 右大将様
・公方様 大納言様
・公方様 若君様
・公方様 内府様 大納言様
・三御所様
- ご機嫌能
・益御機嫌能被成御座奉恐悦候
・益御機嫌能被成御座恐悦奉存候
・益御機嫌能被成御座恐悦旨尤候
・益御機嫌能被成御座恐悦旨尤存候
・益御機嫌能被成御座恐悦御同意奉存候
・益御機嫌能被成御座御同意奉恐悦候
・益御機嫌能被成御座御同意奉存恐悦候
・益御機嫌能被成御座恐悦被思召旨尤之御事候
・益御機嫌能可被成御座奉恐悦候
・御機嫌被相伺之候益御安全御儀候間可被心易候
・弥御機嫌能被成御座候間可御心易候
- 実質の本文の書きだし
・将又
・将亦
・然者
・随而
・次
- 書止文言(恐惶謹言など)の前、締め
・猶期後音之時候
・猶期後音候
・猶期永日之時候
・猶期永陽之時候
・猶期永日候
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