古文書 予備知識(官位)
古文書を読むにあたっての予備知識(官位)です。
<用語>
- 武家官位
公家官位とは別の、武士が任官または自称した官位(官職と位階)のこと
- 官職
大納言などの職のこと
- 位階
従二位などの位のこと
- 権官
権大納言などの「権」がつく、官職における定員外の官人のこと
- 唐名
中納言を黄門侍郎(黄門)、内大臣を内府という唐風の職名のこと
- 贈位・贈官
生前の功績を称えて位階または官職を贈ること
- 極位極官
叙任された最高の位階・官職をそれぞれ極位・極官と呼ぶことから転じて
家格によって叙任される最高の位階・官職をさす
- 官位相当制
位階に対応した官職につくこと
<位階>
- 序列
以下の30段階がある
序列 | 位階 |
1 | 正一位 |
2 | 従一位 |
3 | 正二位 |
4 | 従二位 |
5 | 正三位 |
6 | 従三位 |
7 | 正四位上 |
8 | 正四位下 |
9 | 従四位上 |
10 | 従四位下 |
11 | 正五位上 |
12 | 正五位下 |
13 | 従五位上 |
14 | 従五位下 |
15 | 正六位上 |
16 | 正六位下 |
17 | 従六位上 |
18 | 従六位下 |
19 | 正七位上 |
20 | 正七位下 |
21 | 従七位上 |
22 | 従七位下 |
23 | 正八位上 |
24 | 正八位下 |
25 | 従八位上 |
26 | 従八位下 |
27 | 大初位上 |
28 | 大初位下 |
29 | 少初位上 |
30 | 少初位下 |
- 読み
「正」は「しょう」、「従」は「じゅ」。
「三位」「四位」「七位」はそれぞれ「さんみ」「しい」「しちい」
- 貴族
三位以上は貴(き)、五位以上は通貴(つうき)と称され、五位以上を殿上人という。
その五位以上を貴族、六位以下を「地下(ぢげ)」という
三位以上が公卿
- 正一位
生前に叙されることはまずなく、江戸時代にはいない。贈位は第14代までの将軍全員
- 武家官位
武家官位では、正五位上・正五位下・従五位上は無く、
従一位・正二位・従二位・正三位・従三位・正四位上・正四位下・従四位上・従四位下・従五位下
- 江戸大名
江戸時代の大名のほとんどは、従四位下か従五位下。
四位に進むと、将軍に単独拝謁できた
<官位>
- 主な官位(武家官位)
官職 | 位階(本来の官位相当) | 江戸時代での任官家 |
太政大臣 | 従一位 | 将軍家(まれ) |
左大臣 | 従二位 | 将軍家(まれ) |
右大臣 | 従二位 | 将軍家 |
内大臣(内府) | 従二位 | 将軍家 |
大納言(亜相) | 正三位 | 将軍家・尾張家・紀伊家 |
中納言(黄門) | 従三位 | 水戸家・一橋家・清水家・田安家 |
近衛大将 | 従三位 | 将軍家 |
参議(宰相) | 正四位下 | 前田家 |
近衛中将 | 従四位下 | 井伊家・島津家・伊達家 |
大夫 | 従四位下 正五位上 | |
近衛少将 | 正五位下 | |
侍従 | 従五位下 | |
実際には、官位相当はあてはまっていないことが多い
- 江戸大名
江戸時代の大名のほとんどは、従四位下侍従、従五位下諸大夫
- 官途名
大膳大夫などは官途名といい、元々は中央官庁の職名であった
- 受領名
三河守などは受領名といい、元々は地方官である国司の職名であったが、
江戸大名では官職とは区分していた。
本人希望に対して、以下の場合を除いて、幕府(老中)が許可する形をとった。
同姓同官名を避ける、国持大名の領国名優先(伊達家の陸奥守、島津家の薩摩守等)、
老中と同一名乗りを避ける(大大名は除く)など
<例>
- 内府
豊臣政権での徳川家康が内大臣であったため、その唐名の江戸内府
- 黄門
徳川光圀が中納言であったため、その唐名で水戸黄門
- 遠州
小堀政一が遠江守であったため、その唐名で小堀遠州
- 越前守
大岡忠相が越前守であったため、大岡越前
- 伊豆守
松平信綱が伊豆守であったため、知恵伊豆
- 但馬守
柳生宗矩が但馬守であったため、柳生但馬守
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